カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

路面電車

投稿日:2009年11月10日

ふらっと乗って終点まで

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車窓からは普段着の町が見えてくる


 函館は市電の走る町。町並みの近代化とともに、市電の走る町が日本中からどんどんと消えていくなかで、函館は健在だ。函館市の交通局が運行している。
 路面電車というのは、乗っているだけで楽しくなってくる。ふらっと乗って終点まで行き、ぷらぷら歩き、また乗った地点まで戻ってくる。ぼくはそういう市電の乗り方が好きなのだ。
 車内では函館のみなさんの話し声が聞こえてくるし、車窓からは普段着の函館の町が見えてくる。
IMG_1604_small ということで、函館駅から歩きはじめる。まずは駅前の交差点へ。そこには「函館市道路元標」。北海道の幹線、国道5号と国道278号、国道279号の起点になっている。国道5号は札幌へ、国道278号は恵山を経由し、森で国道5号に合流。国道279号は津軽海峡を渡って下北半島を南下し、野辺地で奥州街道の国道4号に合流する。
 その「道路元標」のある交差点に路面電車の函館駅前電停がある。来た電車に飛び乗った。谷地頭行きだ。終点の谷地頭駅に着くと、すぐ近くの市営谷地頭温泉の湯に入る。赤茶けた湯の色。大浴場には高温湯と低温湯の湯船があるが、ともに熱い。毎朝この湯に入りにくるという人としばし「湯の中談義」をしたあと、立待岬へ。
 その途中には石川啄木一族の墓がある。墓石には啄木の詩、「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」が刻み込まれている。
 天気は快晴。立待岬に立つと、海に落ち込む函館山の断崖を見る。迫力満点の眺め。津軽海峡の対岸には下北半島が青く霞んで見えた。立待岬からの風景を目に焼きつけ、谷地頭から函館駅前に戻った。次に「函館どっく前」行きに乗り、同じようにして終点の函館どっく前まで行き、函館駅前に戻った。さらに「湯の川」行きに乗り、終点の湯の川まで行きたいところだが、残念ながら時間切れということで諦めた。
 鉄道大好きのカソリ(日本の路面電車にはすべて乗っている)が初めて函館の市電に乗ったのは1980年。今から30年ほど前のことだ。その当時は料金は均一で全線110円。1日乗り放題の500円券があって、朝から晩まで函館の市電に乗り、市電だけで函館中をめぐった。
 当時は4系統の路線があった。
①番 駒場車庫前から松風町、栄町経由末広町行き
②番 駒場車庫前から松風町、函館経由谷地頭行き
③番 駒場車庫前から宮前町、函館駅経由函館ドッグ前行き
⑤番 湯ノ川から松風町、函館駅経由十字街行き
 五稜郭に近い五稜郭公園前と函館のかつての中心街だった十字街は4系統ともに通っていた。
 今は湯の川と十字街で分かれる谷地頭、函館どっぐ前を結ぶ路線だけになっているが、それでも函館を横断する路線が残っているのがすごい。料金は30年前のほぼ倍で、2キロまでが200円、4キロまでが220円、7キロまでが240円、10キロまでが250円となっている。全線に乗っても250円ときわめて安い。
 北海道にはもう1本、路面電車がある。それは札幌で、「すすきの⇔西4丁目」間を走っている。

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路面電車の函館駅前電停
終点の谷地頭電停


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市営谷地頭温泉
市営谷地頭温泉の大浴場


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石川啄木一族の墓
墓石には啄木の歌


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立待岬に落ちる函館山


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立待岬から下北半島を見る
立待岬から見る函館の市街地


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終点の函館どっく前に到着
折り返しの湯の川行きになる


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札幌の路面電車


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