カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

モール温泉

投稿日:2009年12月7日

冷えた体には、温泉が一番

 大平原の広がる十勝では、モール泉(モール温泉)で知られている十勝川温泉の「ホテル十勝川」に泊まった。
 すでに夜になっていたが、予約無しで、飛び込みで行ったのにもかかわらず、快く泊めてもらえた。さらに夕食まで用意してもらえた。平日の夜ということもあるのだろうが、何ともありがたいことだった。
 さっそく大浴場のモール泉の湯につかる。入浴客は自分一人。大風呂を独り占めにして湯につかる気分はたまらない。
 10月中旬の十勝の平原は日が落ちてからというもの、急激に気温が下がり、体は芯まで冷え切っていた。それが琥珀色の湯につかった瞬間、いっぺんに体があたたまる。
 この温泉効果のすごさ。バイクで冷え切った体をあたためるには、温泉が一番だ。ストーブにあたっても、部屋に暖房を入れてもこうはいかない。
 湯から上がると、楽しい温泉宿の夕食。カキ鍋、サケの煮魚、煮もの、刺身、茶碗蒸し…といった食事をおいしくいただいた。
 夕食後、すこし時間をおいてモール泉の湯に入る。今度は時間を気にすることもなく、じっくりとゆっくりと湯を味わって入る。
 泥炭層から湧出するモール泉。肌になめらかな、やわらかな湯。植物性モール(泥炭)の有機物を多く含んでいる。そんな湯が肌を通して体内に入ってくるような気分。いつまでも暖かさが残り、その夜の快眠といったらなかった。
 ぼくは目覚めてすぐの朝湯が大好き。湯につかった瞬間、体の全細胞が活き活きとしてくる。この朝湯の温泉効果の大きさには計り知れないものがあると思っている。世界の名湯、モール泉だからなおさらのこと。
 朝湯から上がると、十勝の平原に朝日が昇った。
 朝湯効果と朝日効果の相乗効果で、体内には新たな力が湧きあがってくる。
 朝湯に入ったあとで食べる朝食のうまさは格別。食が進む。ご飯を2杯目、3杯目とおかわり。そして満ち足りた気分で、「ホテル十勝川」を出発した。

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十勝川温泉「ホテル十勝川」に到着
「ホテル十勝川」のモール泉の大浴場


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「ホテル十勝川」から見る十勝の日の出
「ホテル十勝川」を出発


 この「モール泉」が北海道遺産になっている。
「ホテル十勝川」の廊下には、「北海道遺産」のマークの入った十勝川温泉のポスターが貼られていた。十勝美人が湯につかっている写真のポスターには、モール泉について、次のように書かれていた。

モール泉とは『素肌すべすべの湯』。
 モール泉は遥か太古の時代より、葦などの自生植物が長い時間をかけて堆積した亜炭層から湧出する温泉。植物性(モール)の有機物を多く含み、肌への刺激が少なく、一般の温泉にくらべ天然保温成分を多く含むため湯上りの肌はしっとりツルツル。そんな効果を実感できる美人の湯として知られています。

 2006年から2007年にかけて、日本の温泉の「3000湯めぐり」をした。そのときに入った十勝の「モール泉めぐり」を紹介しよう。

 2007年9月19日(第254日目)
 しほろ(士幌)温泉「プラザ緑風」の朝湯に入る。大浴場&露天風呂ともにモール泉。露天風呂の方が色が濃い。しほろ温泉を皮切りに、今日は十勝のモール泉地帯の温泉をめぐっていく。
 朝湯から上がると朝食。食堂でのバイキング。グレープフルーツジュースを飲み、サラダを食べ、朝粥を1杯食べ、そのあと各種料理をおかずにご飯を2杯。刺身が大好きなので、朝からイカ刺しつきなのがうれしい。
 9時15分、出発。ひんやりとした朝の空気を切り裂いてスズキDR-Z400SMを走らせる。
 第1湯目は山の湯温泉「清渓園」(入浴料300円)。ここはしほろ温泉のすぐ近く。9時20分には到着したが、うれしいことに10時前でも入れた。大浴場の内風呂のみ。大風呂のモール泉の湯にどっぷりつかる。朝一番で入る宿の朝湯もいいが、第1湯目で入る温泉もすごくいいもので、湯につかりながら思わず口元がほころんでくる。
 パークゴルフ場が隣接しているが、北海道の温泉の多くはパークゴルフ場とセットになっている。昔ゲートボール、今パークゴルフといったところか…。
 山の湯温泉から士幌へ。
 士幌からは国道241号を南下し帯広方向へ。
 第2湯目は国道241号沿いの「帯広リゾートホテル」(入浴料400円)の湯。大浴場の内風呂のみ。ここもモール泉。浴室の壁一面に富士山が絵が描かれている。ここはまさに十勝平野のど真ん中。平原の湯だ。
 ここもパークゴルフ場が隣接している。
 国道241号をさらに南下し、帯広近郊の市街地に入っていく。
 第3湯目は音更温泉「鳳乃舞」(入浴料380円)。大浴場と露天風呂。モール泉で黄色っぽい湯の色をしている。
 第4湯目は木野温泉(入浴料600円)。大浴場と露天風呂。ここもモール泉で、かなり濃い湯の色。こげ茶色をしている。
 十勝川にかかる十勝川大橋を渡れば帯広市内だが、その手前で左折し、道道73号で十勝川温泉に向かっていく。
 その途中の丸美ヶ丘温泉「丸美ヶ丘温泉ホテル」(入浴料300円)が第5湯目。大浴場の内風呂のみ。2つの源泉はともにモール泉で、大風呂はチョコレート色、小風呂は黄緑色の湯。
 第6湯目は筒井温泉。高層の温泉ホテル「十勝川国際ホテル筒井」(入浴料500円)の湯に入る。大浴場と露天風呂。ともにモール泉で湯量豊富。渓流を見下ろす露天風呂は見事な岩風呂で、内風呂よりも湯の色が濃い。
 第7湯目は十勝川温泉。「ホテル十勝川」(入浴料350円)に入る。大浴場の内風呂のみ。大風呂のモール泉にどっぷりつかる。モール泉の本場、十勝川温泉だけあって、きれいな琥珀色をした湯だ。
 十勝川温泉を最後に帯広へ。ここまでが十勝川北側一帯の温泉めぐり。しほろ温泉から十勝川温泉までで入った温泉のすべてがモール泉。十勝平野はまさに「モール泉地帯」。(略)
 帯広から国道38号で釧路へ。
 まずは帯広近郊の温泉をめぐる。
 第8湯目はオベリベリ温泉。「水光園」(入浴料390円)の湯に入る。大浴場と露天風呂はともにモール泉。露天風呂には長方形と円形の2つの湯船がある。
 第9湯目は札内温泉。札内川にかかる札内橋を渡ったところで左折し、しばらく行ったところにヨーロッパの古城風な造りの「札内ガーデン温泉」(入浴料900円)がある。大浴場と露天風呂はともにモール泉。
 第10湯目は札内駅の近くで国道38号を右折していく幕別温泉。「悠湯館」(入浴料480円)の湯に入ったが、大浴場と階上の露天風呂はともにモール泉。しほろ温泉を含め、ここまで11湯連続のモール泉だ。
(略)
 第11湯目は清見温泉。池田の市街地に入り、JR根室本線の線路を渡った先にある。大浴場の内風呂のみで、塩分の濃いにごり湯。清見温泉の湯につかっていると、
「あー、十勝のモール泉地帯が終った…」
 という実感がした。

「賀曽利隆の日本一周・300日3000湯めぐり」より

「300日3000湯」でつかったモール泉

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しほろ温泉「プラザ緑風」の湯
山の湯温泉「清渓園」の湯


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筒井温泉「十勝川国際ホテル筒井」の露天風呂
十勝川温泉「ホテル十勝川」の湯


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