宗谷丘陵の周氷河地形
投稿日:2010年6月19日
約1万年前までつづいた氷河期の周辺部だった
宗谷国道の国道238号を北上。右手にオホーツク海を見ながらスズキDR?Z400Sを走らせる。浜頓別では白鳥が飛来しているクッチャロ湖を見た。
猿払原野を走り、浜鬼志別を過ぎると、左手にはゆるやかに連なる宗谷丘陵が見えてくる。宗谷丘陵はやがて海に落ち込み、国道238号はその山裾の海岸線を通っていく。
宗谷岬に近づいたところでDRを停める。国道沿いのパーキングエリアからは北海道遺産に指定されている宗谷丘陵の周氷河地形を一望できる。
天塩山地北端の宗谷丘陵のなだらかな斜面は、約1万年前までつづいた最終氷河期の寒冷な気候のもと、氷河周辺部での凍結と融解を繰り返してできた周氷河地形。谷が樹枝状に、幾筋にもなって伸びている。それが大きな特徴だ。
この宗谷丘陵の斜面のシワシワを見ていると、ふと南米・アンデスのジャガイモの保存食「チューニョ」を思い出した。アンデス高地はジャガイモの原産地。そこでは収穫したジャガイモを外に放り出しておいてチューニョをつくっているが、夜間の寒さで凍りつき、昼間の暖かさで溶け…と、凍結、融解を毎日繰り返すとカチンカチンになったチューニョが出来上がる。その表面のシワシワと宗谷丘陵のシワシワが何となく似ているのだ。
宗谷丘陵には無数の風力発電用の風車が見られたが、ここは日本でも有数の風力発電地帯。全部で57基の風車があるという。
国道238号を走り、日本最北端の宗谷岬に到着。宗谷岬は宗谷丘陵の最北端でもある。我らツーリングライダーの憧れの地、「日本最北端碑」から宗谷海峡の水平線上に浮かぶサハリンを見た。さらに丘陵上に登り、「旧海軍望楼」から夕暮れのサハリンを見た。 宗谷岬では民宿「宗谷岬」に泊った。前年の「日本一周」でも泊った宿で、女将さんが自分のことをおぼえてくれていたのがすごくうれしい。
民宿「宗谷岬」の食事は良かった。ツボダイの焼き魚とサンマのたたき、毛ガニの脚…の北海の幸のほかに、超美味のラムの焼肉が出た。
翌朝は夜が明けるとすぐに「日本最北端碑」と「旧海軍望楼」に行き、宗谷海峡の水平線上のサハリンを見た。こうして2日連続でサハリンを見られたのはラッキーだ。
民宿「宗谷岬」に戻り、朝食をいただいたあとで出発。宗谷岬から宗谷丘陵に登り、丘陵上の道を走る。絶好のツーリングコースだ。丘陵上の広大な牧場では「宗谷牛」で知られる黒毛和牛が放牧されている。その数は2000頭を超えるという。
世界の氷河はとてつもなくでかい
ところで日本の氷河地形というと、北アルプス高峰群のカール(圏谷)がよく知られているが、残念ながら氷河を見ることはできない。
ということで、世界で見てきた氷河を紹介しよう。
世界の氷河
昨年(2009年)の「北海道遺産めぐり」の前、7月から8月にかけては中国製バイクでチベットを横断した。その間では崑崙山脈の「現代氷河」とヒマラヤ山脈・シシャパンマ(8012m)の氷河を見た。
崑崙山脈の「現代氷河」には3本の氷河があって、今は間氷期にもかかわらず、3本とも成長しつづけているという。その麓を青蔵鉄道が通っている。3台のジーゼルカーに引かれた14両編成の列車がラサに向かって走り過ぎていくシーンは強烈に目に残った。
ヒマラヤ山脈には無数の氷河があるが、そのうち8000m峰シシャパンマの氷河のすぐ近くを通った。そのままバイクで駆け登っていけるのではないかと思えるほどの、ゆるやかな起伏の風景。抜けるようなチベッタンブルーの青空を背にした氷河の輝きがまぶしかった。
2008年には「南米・アンデス縦断」で1万6000キロを走ったが、そのクライマックス・シーンはアンデス山脈のモレノ氷河。それを目にしたときの驚きといったらない。
「すごい!」
その一言で、あとは絶句してしまった。
アンデス山脈の稜線に端を発する全長350キロのモレノ氷河は、最後に4キロもの幅となって、アルゼンチナ湖に流れ込む。落ち込んでいるといったほうがよりピッタリだ。 それは「氷河」の言葉通りの「氷の河」で、それもとてつもない大河だ。
湖面にせり出した氷河先端の壁は100メートルほどの高さ。その巨大な氷壁はあちらこちらで崩れ落ち、そのたびに雷が落ちたような、または大木がへし折られるような轟音をあたりにとどろかせ、氷の塊となって湖にプカプカと浮かぶ。真っ青なアルゼンチナ湖の湖面には大小いくつもの氷山が浮かび、夏の強い日差しを浴びて不気味なほどに青白く光り輝いていた。
周氷河地形の宗谷丘陵をDR?Z400Sで走っていると、そんな世界の氷河の光景が目に浮かんでくるのだった。