カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第28回 鈴ヶ森林道

投稿日:2011年1月19日

2010年 林道日本一周・西日本編

四国の大河をわける矢筈峠へ

 国道439号の矢筈峠(やはずとうげ)に到着。峠のトンネルの入口にスズキDR-Z400Sを停めて写真を1枚。峠に着くと、必ず写真を撮る「峠のカソリ」なのだ。
 国道439号は四国横断ルート。徳島が起点(剣山直下の見ノ越までは国道438と重複)、中村(四万十市)が終点になる。その間ではいくつもの峠を越えていくが、中でも矢筈峠は重要だ。四国第2の川、四万十川と第3の川、仁淀川を分けている。この矢筈峠のトンネルを抜け出ると、四万十川の世界に入っていく。
 だが矢筈峠は越えずに峠のトンネルの手前を左折。県道378号に入っていく。
 四万十川の源、不入山(1336m)北東の峠、船戸越を越えて四万十川の水系に入っていく。峠を下ると2又の分岐。船戸の集落に通ずる県道378号は直進するが、そこを右へ、四万十川源流地点への道を登っていく。
 四万十川源流への道は1999年の「林道日本一周」のときはダートだったが、今では全線が舗装路。3キロほど走ったところに「四万十川源流之碑」が建っている。
 平成5年に建立されたもので、その裏面には、「四万十川源流碑建立由来」が書かれている。時の高知県知事、橋本大二郎の一文で、なかなかのものだ。

 不入山は神秘な霊山として人々の深い尊敬と信仰を集めて今日に至っている。
 その不入山より湧き出た一滴の水が一筋の流れとなり川となってそれぞれの地域の文化を育み乍ら一九六キロの大河を形成して太平洋に注いでいる。
 此の蒼き流れの四万十川こそわれらの母なる川である。
 此の流域に暮す四国西南地域の人々は美しきシ・マムタの天恵に感謝し亦その脅威と戦い乍ら今日を生きている。
 我々は此の川を創造した不入山を限りなく崇拝すると共に清流の恵みに感謝し此の川が日本最後の清流として永く人々に愛され親しまれ不変の生命を持ち続ける事を願って此の碑を建立するものである。

 この碑文にもあるように、四万十川の全長は196キロで吉野川よりもわずかに長く、四国最長の川になっている。
「日本一の清流」で知られる四万十川だが、四国第3の大河、仁淀川流域の人たちは、「仁淀川の方がよりきれいな清流だ」といっている。
 おそらく四万十川の川名の由来なのだろう、碑文にある「シ・マムタ」の意味を知りたい。

カソリの疑問に読者の山崎さんからコメントをいただきました。原文をそのまま引用させていただきます。

おはようございます。賀曽利さん。
 四万十川の源流点って、引かれるところですよね。長い事、行ってないので、写真を見ていたらまた行ってみたくなりました。源流の水で、コーヒーをわかして飲んだ事を思い出します。
 ところで、「シ・マムタ」の意味ですが、どうやらアイヌ語が語源のようですよ。アイヌ語で「最も美しい」という意味になるそうです。四万十川に架かる沈下箸のある所に、「口屋内」という地名があるんですが、「くちやない」と読みますが、「屋内」を「ヤムナイ」と読むと、アイヌ語で「冷たい川」となるそうですよ。この「内」いう字が北海道にも多く見られる事も、関係があるようです。黒尊川上流にも「奥屋内」という地名があるそうです。
 北海道のアイヌ民族ですが、初めて北海道に行った時には知らなかったんですが、のちのち色々調べていくうちに、ホッサマグナを境に東日本側がアイヌの国の「句国」、西日本側が「邪馬台国」だった様ですが、もしかしたら同じ様な言語を使っていたのかもしれません。紀元3世紀の後半の混乱期にこの辺りまで住み着いていたのかは謎ですが、日本のあちこちに痕跡があるんですね。
 話がそれてしまいましたが、「シ・マムタ」は「最も美しい」という意味のようですよ。
 「林道・日本一周」続きを楽しみにしていますね?

「四万十川源流碑」の脇を四万十川の源流は流れているが、この流れに沿って登山道を30分ほど登ると、最初のひとしずくの源流点まで行ける。

ダート区間20.3km、ロングダートでの峠越え

「四万十川源流碑」に別れを告げ、県道378号で船戸へ。ここは四万十川源流の里。国道197号にぶつかるが、まずは旧道で布施ヶ坂峠まで登り、次に新道で峠を貫く布施ヶ坂トンネルの入口まで行った。布施ヶ坂峠も四万十川を取り囲む分水嶺で、この峠以西が四万十川の世界になる。
 船戸から県道19号を南下すると、四万十川上流の松葉川に沿って窪川に出るが、ここでいったん四万十川の本流を離れる。
 国道197号で峠を越え、東津野(津野町)へ。ここでさきほどの国道439号に合流。今度は国道439号で四万十川の支流、北川に沿って走る。一軒宿の郷緑温泉に行くと休業中で残念ながら入れなかった。その郷麓温泉のすぐ先で国道439号を左折し、ロングダートの鈴ヶ森林道に入っていく。林道の入口からダートなのがうれしい。峠に向かって一気に高度を上げ、林道入口から7・7キロ地点で峠に到達。林道の峠というのは歴史が新しいこともあって大半は名無し峠、鈴ヶ森林道の峠も同様で名無し峠だ。
 峠を越えると整備された路面に変り、四万十川本流の松葉川へと下っていく。鈴ヶ森林道のダートは20・3キロ。西日本では数少ない20キロ超のロングダートだ。舗装路を3キロほど走ると、松葉川沿いの県道19号に出た。

フォトアルバム

国道439号の矢筈峠のトンネル
県道378号で船戸越を越えていく


四万十川源流への道との分岐点
「四万十川源流之碑」に到着


これが「四万十川源流之碑」
四万十川源流点への登山道


四万十川源流の里、船戸の集落
国道197号旧道の布施ヶ坂峠


布施ヶ坂峠からの眺め
国道197号新道の布施ヶ坂峠のトンネル


東津野からは国道439号を行く
郷麓温泉休業中…


鈴ヶ森林道のダートに突入!
峠に向かって登っていく


鈴ヶ森林道からの眺め
鈴ヶ森林道の名無し峠




四万十川上流の松葉川

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