カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第44回 鹿児島市街

投稿日:2011年2月9日

2010年 林道日本一周・西日本編

日本の県庁所在地で一番の大温泉地

 鹿児島中央駅前の「東横イン」を出発。スズキDR-Z400Sで早朝の鹿児島を走る。「鹿児島探訪」の開始だ。
 まずは温泉。
 鹿児島中央駅近くの「みょうばん温泉」に入る。ここは朝6時からやっている。常連さんが何人も来ていてみなさん、湯につかりながら親しげに話している。そんな光景を湯につかりながら見ているのはすごくいいものだ。
 鹿児島はあまり知られていないが、日本の都道府県庁所在地では、一番の温泉地。市内には180ヵ所もの「鹿児島市内温泉」の源泉がある。60ヵ所以上もある浴場も、その大半が温泉だ。
 この「みょうばん温泉」のように早朝からやっている。5時からのところも多い。どこも入浴料金は360円。朝早くから夜遅くまで、ほぼ1日中、360円でこれだけいい温泉に入れるのだからうらやましくなってしまう。
 しかし鹿児島市民にとっては、まったく当たり前のことなので、それほどありがたがっている風には見えない。
 鹿児島中央駅の近くは西田温泉や荒田温泉、鹿児島駅の近くには滑川温泉や湯乃山温泉などがある。
「みょうばん温泉」の朝湯でさっぱりしたところで照国神社を参拝。名君の誉れ高い薩摩藩11代目の藩主、島津斉彬をまつっている。境内には斉彬の像が建っている。斉彬といえば薩摩の富国強兵に尽くし、西郷隆盛らの幕末に活躍した人材を育てた。
 そのすぐ近くには西郷隆盛像が建っている。隆盛像前の交差点はまさに鹿児島の十字路。ここは九州の2大幹線、国道3号と国道10号の終点であり、さらに国道58号の起点になっている。
 国道58号は鹿児島市内は鹿児島港までの700メートルほどでしかないが、鹿児島港からは種子島、奄美大島を経由し、沖縄本島を縦断して那覇が終点になっている。海上区間を合わせれば、日本最長の国道だ。
 西郷隆盛像のすぐ隣りは鶴丸城跡。薩摩藩77万石、島津氏270年の居城だったとはとうてい思えないような寂れ方。残された擬宝珠のついた石橋や苔むした石垣、蓮の浮かぶ堀などが、加賀藩に次ぐ日本第2の大藩の面影をかろうじてとどめている。
 鶴丸城の石垣には無数の弾痕が残っている。それらは明治10年の西南戦争のときのもの。西郷隆盛を総大将とした薩摩軍は熊本の田原坂で政府軍に大敗し、鹿児島まで退却。鶴丸城跡の裏山、城山が西郷隆盛らの終焉の地になった。西南戦争での敗戦は、薩摩に致命的な打撃を与えた。その後遺症はいまだにつづいている。
 鶴丸城跡からは城山に登る。城山は鹿児島の町にせり出したシラス台地の先端。
 高さ108メートルの城山の展望台に立つと、早朝の鹿児島の町並みを一望する。足下には天文館からいづろ通り、朝日通りとつづく鹿児島一番の繁華街。その向こうには噴煙を上げる桜島が見える。
 城山は緑の濃い山だ。シイやカシ、クスノキなどの照葉樹の大木で覆われている。鹿児島という大都市のすぐ裏手に、これだけの自然が残っているのがすごい。
 城山を下ると路面電車の走る大通りで鹿児島駅まで行き、そこで折り返して鹿児島中央駅前に戻り、「鹿児島探訪」を終えた。

フォトアルバム

早朝の鹿児島中央駅前通り
鹿児島の玄関口、鹿児島中央駅


鹿児島中央駅に近い「みょうばん温泉」
照国神社


島津斉彬の銅像
西郷隆盛の銅像


国道58号の起点
鶴丸城跡


城山から見下ろす鹿児島の中心街
城山から見る桜島


城山の大楠
鹿児島駅前の電停


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