カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第89回 大窪林道

投稿日:2011年4月11日

2010年 林道日本一周・東日本編

ロングダート3連発!

 南会津町の針生(はりう)から国道289号の旧道で駒止峠へ。峠の手前で右折し、玉川林道のダートに入っていく。ほどよく整備された路面。4・8キロ地点で二又の分岐に出るが、左は玉川林道、右が大窪林道になる。スズキDR-Z400Sのアクセルをひとひねりしてエンジンの回転を上げ、分岐を右へ、ゆるやかな坂を登っていく。
 大窪林道は南会津町と昭和村の境の稜線近くを通っていくが、見晴らしはよくない。展望ポイントもない。だが最後の区間はパーッと視界が開け、舟鼻山(1226m)の山頂直下から国道400号の舟鼻峠(970m)へと下っていく。
 ダート17・5キロ、ロングダートの大窪林道だ。玉川林道と合わせれば22・3キロのダートになる。
 舟鼻峠からは国道400号→県道346号で下郷に出た。
 下郷からは国道121号を北へと走り、国道沿いの弥五島温泉「郷の湯」(入浴料300円)に入る。以前からの敷地内に新築された建物。気持ちよく湯に入れた。
 大川(阿賀川)沿いに温泉宿が建ち並ぶ湯野上温泉からは国道118号で奥羽山脈の鳳坂峠に向かっていく。下郷町から天栄村に入り、羽鳥ダムの手前で国道を左折。馬入峠を越える県道235号に入っていく。2キロほど行ったところで左折、その道が黒沢林道に通じている。最後の集落(といってもポツンと家が見える程度)の黒沢を過ぎるとダートに突入。県道から4・4キロの地点。道幅の狭いダートをDRのエンジン音を響かせ、安藤峠に向かって登っていく。峠の手前にT字の分岐があるが、そこは右へ。天栄村と会津若松市の境の安藤峠に到達。標高1027メートルの峠。南の天栄村側の眺めがいい。はるか遠くには那須連峰を望む。
 安藤峠からは深い森の中を下り、森林から抜け出たあたりで舗装路になる。ダート11・3キロの黒沢林道。またしてもロングダートの林道だ。
 舗装路を下っていくと県道325号に入っていくが、黒沢林道もこの県道に組み込まれたルートなのかもしれない。会津若松側は少しづつではあるが、舗装区間が延びている。
 県道325号を下り、4、5キロ走った一ノ渡戸で左折し、一ノ渡戸・四ツ屋林道に入っていく。県道から1・0キロ地点でダートに突入。ゆるやかな山並みの稜線近くを通っていく。よく整備された路面で走りやすい。DRにとってはもの足りないほどで、スピードを上げて走り抜けた。最後の思案岳(874m)の近くは山並みが険しくなり、深い谷をまたぐ橋を渡っていく。舗装路に出ると四ツ屋の集落。山肌に家々がかたまって建ち並んでいる。
 ダート15・1キロの一ノ渡戸・四ツ屋林道。これで3連続のロングダート。これぞまさしく東北といったところだ。

20世紀最後を過ごした「滝の湯」に到着

 四ツ屋から5キロほど下り、国道118号(国道121号との重複区間)に出ると会津盆地の中心、会津若松の町に入っていった。
 会津若松のシンボル、鶴ヶ城の天守閣に登り、会津若松の町並み、会津盆地を取り囲む山並みを眺めた。
 会津若松からは国道49号で会津板下へ。会津板下の町並みが途切れるあたりで国道を右折し、5キロほど走り、田園の一軒宿、津尻温泉「滝の湯」に行く。ここが今晩の宿。なつかしい!
 ここには20年前の1991年、相棒の高木剛さんと東京から稚内に向かったときに初めて泊まった。宿の奥さんにはよくしてもらい、その後、何度か泊まっている。
 一番の思い出は10年前の2000年だ。
「20世紀最後のツーリング!」
 ということで、2000年12月30日、東北・太平洋岸のいわきを出発し、国道49号で新潟を目指した。いわきから郡山までは猛烈に寒かったが雪はなかった。ところが磐梯熱海温泉を過ぎたころから雪が降り始め、中山峠を越えて会津に入ると一面の雪景色。「やばいゾ、やばいゾ」
 と思いつつバイクを走らせたが、猪苗代でついにやってしまった。
 うっすらと雪の積もったアイスバーンで見事に転倒…。ツーーーーーッと路面を滑っていった。ゆるい左カーブだったが、何ともありがたいことに、カーブを抜け出たところで大型トラックがハザードをつけて止まってくれていた。
 このトラックの運転手さんのおかげで助かったようなものだ。
 そのあとはすさまじいばかりの転倒ラッシュ。スッテンスッテン、何度、転んだことか。それ以降の転倒は速度を落としているので危なくはなかったが、もう体中、青アザだらけ。ぼそぼそ降り続く雪の中を会津板下まで走り、津尻温泉に向かったのだが、その間の道のりの長かったこと…。宿に到着し、ヒリヒリ痛む体で湯につかったときは、
「あー、助かった」
 と思わず声が出た。
 その翌日も国道49号の雪道と大格闘して新潟まで走った。
 津尻温泉の「滝の湯」に入っていると、命がけで走ったあの時の、雪の国道49号のシーンが鮮やかに目に浮かんでくるのだった。

より大きな地図で 林道日本一周東日本編 を表示
今回のエリア:昭文社ツーリングマップル東北 7、8、13、18あたり

大窪林道→弥五島温泉→天栄村→黒沢林道→一ノ渡戸・四ツ屋林道
→会津若松→津尻温泉

大窪林道のダートに突入!
舟鼻峠に到達


弥五島温泉「郷の湯」に入る
黒沢林道のダートに突入!




安藤峠

安藤峠を下っていく
黒沢林道の両側の深い森


一ノ渡戸・四ツ屋林道
会津若松の鶴ヶ城




鶴ヶ城からの眺め

津尻温泉「滝の湯」に到着
「滝の湯」の夕食


Comments

Comments are closed.