5月11日(9)蒲庭温泉
投稿日:2011年6月11日
常磐線の原ノ町駅前を再度、出発。国道6号を横切り、海沿いの県道74号を行く。
南相馬市の太平洋岸は、大きな被害を受けていた。あまりにもすさまさに目を覆いたくなるほど。堤防が粉々に砕けているところもあった。かつては100戸、200戸とあった集落が跡形もなく、消え去っていた。
そんな中に奇跡の現場があった。海岸近くの一軒宿の温泉、蒲庭温泉「蒲庭館」だ。
ここには何度か泊まったことがあるが、蒲庭温泉はそっくりそのまま残り、営業を再開していた。
夕方の6時過ぎに飛び込みで行ったのだが、心やさしいおかみさんは部屋をあけて泊めてくれた。夕食も用意してくれるという。
というのはここは日本中からやってきた仮設住宅建設の業者のみなさんが泊まっていて満室だったからだ。
若奥さんの津波の話は衝撃的。
ちょうどその時は高台にある小学校での謝恩会の最中だったという。そこから巨大な「黒い壁」となって押し寄せてくる大津波が見えたという。巨大な「黒い壁」は堤防を破壊し、あっというまに田畑を飲み込み、集落を飲み込んだ。
多くの人たちが逃げ遅れ、大変な数の犠牲者が出てしまった。
「地震のあと、大津波警報が出たのは知ってましたが、どうせ5、60センチぐらいだろうと思ってました。まさかあんな大きな津波が来るなんて…」
「蒲庭館」の若奥さんのそんな言葉は胸に残った。
温泉の湯から上がると夕食。
「何しろ食材が手に入らないもので…」
といいながら夕餉の膳を持ってきてくれた。
部屋食だ。
ビールをキューッと飲み干したあと、刺身や焼き魚、コロッケなどの夕食をいただく。こうして温泉宿に泊まり、温泉に入り、夕食まで食べられたことが信じられないような思いだった。