カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

V-Strom1000で行く日本[5]

投稿日:2015年10月30日

バイクの通行は未だ禁止

2015年9月11日(福島一周)

 国道6号で広野町から楢葉町に入る。国道6号の左側には道の駅「ならは」があるが、いまだに休業中。JR常磐線の木戸駅前を通り、木戸川の河口へ。海に流れ出る地点はまるで渓流のような流れの速さ。対岸の高台が天神岬になる。

 木戸川はサケの遡上する川として知られている。河口から1キロほどの地点にサケのヤナ場とサケのふ化場があったが、大津波で破壊された。養魚池にいた1500万匹もの稚魚が流された。壊滅状態の楢葉のサケだったが、木戸川漁協は買い入れたサケの稚魚1万匹を放った。ヤナ場の災害復旧工事は進み、ふ化場も再建中でサケがやってくる頃には完成するという。

 木戸川を渡り、天神岬に行く。岬の突端は絶好の展望台。足下を木戸川が流れ、大津波によって堤防の破壊された海岸線の向こうに広野の火力発電所が見える。ぼくは東日本大震災以降、何度となく「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走っている。鵜ノ子岬は東北太平洋岸の最南端、尻屋崎は最北端になる。天神岬はその定点観測地点のようなもので、来るたびに、ここから見下ろす楢葉の変わりゆく風景の写真を撮っている。

 天神岬を後にし、JR常磐線の竜田駅へ。現在、常磐線はここまで開通している。駅前には常磐道の全線開通にともなって、JR代行バスのバス停ができている。常磐線の不通区間の竜田駅と原ノ町駅を結ぶ直通バスだ。竜田駅発9時35分と20時10分の1日2便が出ている。

 楢葉町の最後は波倉。太平洋岸ではここが楢葉町の最北の地になる。海岸に出ると、大津波によって破壊された堤防はそのままの姿で残っている。すさまじい光景。その先には東電の福島第2原子力発電所が見える。福島第2原子力発電所は楢葉町と富岡町にまたがっているのだ。

 波倉の破壊された堤防からもわかるように、第2も第1同様、電源喪失で大事故を引き起こす寸前だった。発電所のみなさんの決死の行動があったからだが、第2が爆発事故を起こさなかったのは奇跡だといわれている。もし第2が爆発事故を起こしていたら、第1よりもはるかに出力の大きな原子力発電所なので、首都圏が全滅した可能性もあったという。

 波倉を最後に、楢葉町から富岡町に入り、JR常磐線の富岡駅跡に行った。大津波で破壊された駅舎はきれいさっぱりと取り壊され、ホームと赤く錆びた線路が残っているだけだった。駅前の商店街は崩れかかった建物がそのまま残っていた。富岡では除染作業が急ピッチで行われており、除染用の黒袋が海岸一帯にうず高く積まれていた。富岡駅から富岡の中心街へ。町民がまだ戻っていないので、町は静まりかえっている。

 国道6号は昨年の9月15日に全線が開通し、大震災から3年半ぶりに通れるようになった。といってもそれは車だけで、バイクでの通行は禁止されている。そこで富岡からは県道112号を走って山沿いの県道35号に出た。県道35号を北上し、県道36号との交差点を右折し、3月1日に全線が開通した常磐道に常磐富岡ICから入った。常磐道はバイクでも通行できる。そして次の浪江ICで常磐道を降りるのだった。

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▲天神岬から見る東電の広野火力発電所

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▲JR常磐線の竜田駅

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▲波倉から見る東電の福島第2原子力発電所

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▲JR常磐線の富岡駅跡

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▲富岡駅前には大津波で破壊された家が残っている

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▲富岡町内を通る常磐道

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▲常磐道の浪江ICに到着

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