カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[25日目]

投稿日:2017年7月20日

温泉に入るのって、難しいねえ

甲信編 1日目(2006年12月1日)

「さー、甲信編の開始だ!」と、気合を入れてスズキST250とともに、東京・日本橋に立った。日本橋にはうれしいことに、日本の冒険者、探検者集団「地平線会議」代表世話人の三輪主彦さんが見送りに来てくれた。さらにライダーのみなさんたちも。正木さんは「島めぐり日本一周」(2001年〜2002年)でも何度も見送りに来てくれた人。蔵川さんはぼくと同じスズキST250に乗ってやってきた。それと根岸さん、昭文社の桑原さんと井沢さん、デザイナーの大熊さん。昭文社の若林政一郎さんが2日間、スズキのスクーターのスカイウェーブ400に乗って同行してくれる。若林さんとは毎年、東北を一緒に走っているので気心の知れた仲。絶好のツーリング日和(ちょっと寒いけれど)で、抜けるような青空が広がっている。

 7時に日本橋を出発。国道20号(甲州街道)を西へ。国道沿いの「ロイヤルホスト」で朝食。「和定食」を食べ終えると、『ツーリングマップル』を見ながらのプラニング。この時間がたまらん!

 調布、府中、八王子と通り、高尾から大垂水峠を越えて神奈川県に入る。峠を下ったところで国道を右折。1キロほど走り、山中の一軒宿、美女谷温泉に行く。だが、残念…。宿には鍵がかかり、誰もいなかった。

 国道20号に戻ると、次にJR中央線の藤野駅のわきから陣場の湯温泉に向かっていく。国道20号から4キロほどの距離。ここには「陣谷温泉」、「陣渓園」、「姫谷」と3軒の温泉宿があるが、そのうち一番奥の「姫谷」の「大岩露天風呂」に入った。今日の第1湯目に入ることができてよかった。日本橋から75キロ、寒風をついて走ってきたので体はもう冷え冷え。湯につかるとそんな体が急速にあたたまる。この「大岩露天風呂」というのは宿内に入り込んでいる自然の大岩をうまく取り込んだもので、「大岩風呂」であっても、「大露天風呂」ではない。

 国道20号で山梨県に入り、甲州街道の宿場町、上野原へ。鶴温泉の一軒宿「つるや旅館」に行ったが、まだ湯を沸かしていないということで入れなかった。ここの湯には以前、入ったことがあるが、まったく普通の民家を訪ね、民家の湯に「もらい湯」をするような気分で入る温泉だった。鶴温泉から上野原駅前に行き、駅前食堂の「一福」で昼食。「味噌ラーメン」にライスをつけてもらい、ぼくのツーリングの定番メニューの「ラーメンライス」を食べた。

 上野原からは旧甲州街道を行く。その間には鶴川宿、野田尻宿、犬目宿の旧甲州街道の宿場3宿が残っている。そんな旧甲州街道沿いにある古城温泉と君恋温泉の2湯をめぐる。古城温泉は古風な造りの温泉宿。だが残念ながら湯を沸かすボイラーが修理中ということで入れなかった。ということで君恋温泉が第2湯目になった。旧甲州街道からわずかに登ったところに「君恋温泉旅館」がある。こちらの湯は沸かし過ぎで「アチチチッ」状態。あわてて湯に飛び込んだら、大火傷をするところだった。かなり水を入れたが、それでもなお「アチチチッ」。そんな湯にグッと我慢して入った。湯から上がると、「これはサービスよ」といって宿の女将さん(娘さん?)が「味噌田楽」をもってきてくれた。それを若林さんと2人、誰もいない休憩室で食べた。おそらく自家製の味噌だろう、味噌の味が最高。こんにゃくもうまいものだったが、宿の玄関には大きなコンニャク玉があったので、これも自家製かもしれない。この一帯は安い輸入ものが入る以前はコンニャクの一大産地だった。

 大月からはまず国道139号で松姫峠に向かう。峠下の松姫温泉に行くと、宿は休み…。「まあ、仕方ないか」。そんなところに軽トラックに野菜を積んで、宿の主人がやってきた。「客がいないときはお湯を沸かしていないけど、今度は来る前に電話してよ。30分前に電話をもらえば、ちゃんと入れるようにしておくから」とのこと。松姫温泉に入れずに大月に戻った。

 大月からは国道20号で笹子峠に向かっていく。だがその間の真木温泉、橋倉温泉、日の出温泉、笹子温泉(廃業湯)の4湯には入れなかった。美女谷温泉、鶴温泉、古城温泉、松姫温泉の4湯にも入れなかったので、入れなかった温泉は合計8湯。これはもう記録だ

 その中にあって唯一、入れたのは金山温泉の一軒宿「山口館」の湯。「今日はお客さんもいないので、まだ沸かしてないのよ」という女将さんに無理をいって沸かしてもらった。そんな金山温泉の湯はよかった。源泉100%の湯は、まるでもみほぐしたかのようなやわらかさ。トロッとした肌ざわり。総ヒバ造りの湯船につかっていると、どんどん熱くなってくる。温湯から熱湯になるまで、たっぷりと長湯して金山温泉の湯を楽しんだ。湯から上がると、女将さんは、「ウチは7500円(1泊2食)で安いからね。今度は泊まりで来てよ」といいながら我々2台のバイクを外に出て見送ってくれた。女将さん、無理を聞いてくれて、ほんとうにありがとう!

 笹子峠を越えて甲府盆地へ。甲州人風にいえば、大月、都留を中心とする「郡内」から、甲府を中心とする「国中」に入った。

 一面のブドウ園の広がる勝沼では、第4湯目、ぶどうの丘温泉の日帰り湯「天空の湯」に入った。内風呂の湯でよくあたたまったあとは、寒風の吹きすさぶ露天風呂へ。そこから見渡す甲府盆地の夜景はすごかった。甲府周辺は光の洪水。湯から上がると、「天空の湯」で夕食にする。若林さんと特産の「ぶどうジュース」で乾杯。そのあと「ピザ」&「カレーライス」を食べた。

 今晩の宿、塩山温泉の「廣友館」に到着したのは20時30分。すぐに第5湯目の「宿湯」に入る。広々とした浴場。大きな湯船にどっぷりとつかりながら若林さんと、「温泉に入るのって、難しいねえ…」という話をするのだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
7時 東京・日本橋を出発 「甲信編」、開始!
若林政一郎さんが同行してくれる
朝食 仙川の「ロイヤルホスト」 「和定食」
大垂水峠(峠越え) 神奈川県に入る
美女谷温泉(入れず)
陣馬の湯温泉「陣谷温泉」(入れず)
人馬の湯温泉「陣渓園」(入れず)
205湯目 陣場の湯温泉「姫谷」(1000円)
山梨県に入る
鶴温泉(入れず)
昼食 上野原の「一福食堂」 「味噌ラーメン」(630円)
古城温泉(入れず)
206湯目 君恋温泉「君恋温泉旅館」(500円)
松姫温泉(入れず)
真木温泉(入れず)
橋倉温泉(入浴のみ不可)
207湯目 金山温泉「山口館」(500円)
日の出温泉(入れず)
笹子温泉(廃業湯)
笹子峠(峠越え)
208湯目 ぶどうの丘温泉「天空の湯」(600円)
夕食 「天空の湯」 葡萄ジュース(400円)、カレーライス(800円)、ミックスピザ(800円)
209湯目 塩山温泉「廣友館」(1泊朝食10000円)
本日の走行距離数 203キロ
本日の温泉入浴数 5湯

日本橋に見送りに来てくれた三輪主彦(左)さんと仙川の「ロイヤルホスト」で朝食。「和定食」を食べる甲州街道のイチョウ並木

日本橋に見送りに来てくれた三輪主彦(左)さんと 仙川の「ロイヤルホスト」で朝食。「和定食」を食べる 甲州街道のイチョウ並木

美女谷温泉陣馬の湯温泉「陣谷温泉」陣馬の湯温泉「姫谷」

美女谷温泉 陣馬の湯温泉「陣谷温泉」 陣馬の湯温泉「姫谷」

陣馬の湯温泉「姫谷」の湯スズキST250で甲州路を行く鶴温泉「つるや旅館」

陣馬の湯温泉「姫谷」の湯 スズキST250で甲州路を行く 鶴温泉「つるや旅館」

上野原駅前「一福食堂」の「味噌ラーメンライス」旧甲州街道の野田尻宿古城温泉

上野原駅前「一福食堂」の「味噌ラーメンライス」 旧甲州街道の野田尻宿 古城温泉

君恋温泉「君恋温泉旅館」君恋温泉「君恋温泉旅館」の湯に入る君恋温泉「君恋温泉旅館」の味噌田楽

君恋温泉「君恋温泉旅館」 君恋温泉「君恋温泉旅館」の湯に入る 君恋温泉「君恋温泉旅館」の味噌田楽

君恋温泉「君恋温泉旅館」からの眺め松姫温泉真木温泉

君恋温泉「君恋温泉旅館」からの眺め 松姫温泉 真木温泉

橋倉温泉金山温泉「山口館」金山温泉「山口館」の湯に入る

橋倉温泉 金山温泉「山口館」 金山温泉「山口館」の湯に入る

ぶどうの丘温泉「天空の湯」に入るぶどうの丘温泉「天空の湯」のカレーライスとミックスピザ塩山温泉「廣友館」の湯に入る

ぶどうの丘温泉「天空の湯」に入る ぶどうの丘温泉「天空の湯」のカレーライスとミックスピザ 塩山温泉「廣友館」の湯に入る

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