カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[26日目]

投稿日:2017年7月21日

ほうとうパワー

甲信編 2日目(2006年12月2日)

 塩山温泉「廣友館」の朝湯は最高に気持ちよかった。浴室の窓を開けると、一片の雲もない青空が広がっている。「さー、今日もやるぞ!」という気分になってくる。よせゆば、ゆでゆば、納豆、ゆで卵、のり、焼きナス、醤油漬けのタマネギ、そば、漬物、自家製ヨーグルトの朝食のあと、8時30分、出発。宿の若奥さんは寒い中、我々が走り出すまで玄関前に立ち尽くして見送ってくれた。

 塩山から国道411号で柳沢峠に向かったが、強烈な風の冷たさ。「関東編」で奥多摩側から柳沢峠まで行ったときから10日しかたっていないが、その間に季節は秋から冬へ、はっきりと変わっていた。塩山から18キロで柳沢峠に到達。正面には富士山がくっきりと見えている。峠の茶屋でストーブにあたりながら、熱いコーヒーを飲んだ。

 柳沢峠の「峠返し」で、峠下の大菩薩の湯温泉、裂石温泉の2湯に入る。

 第1湯目は大菩薩の湯温泉の日帰り湯「大菩薩の湯」。広々とした露天風呂。無色透明の湯にはぬめりがある。休憩室で休んだが、ここは食べ物の持ち込み可なのがいい。

 第2湯目の裂石温泉「雲峰荘」の湯には、「大菩薩の湯」から柳沢峠に少し戻るようにして入った。大石を配した露天風呂には熱い湯(加熱)が流れ込んでいる。露天風呂の湯につかっていると、落葉がヒラヒラと舞い落ちてくる。風情のある露天風呂だ。

 柳沢峠から塩山に戻ると、武田信玄の墓のある恵林寺前を通り、牧丘へ。牧丘からは国道140号で雁坂峠に向かい、一気に峠の有料トンネル入口まで行った。甲州側のトンネル入口は料金所からわずか200メートルほど。どうしてもトンネル入口に相棒のスズキST250を停めて写真をとりたかったので、わずか200メートルのために560円、往復で1120円、若林さんの分も合わせ、2台分の2240円を払った。
「関東編」で冷たい雨に打たれながら、反対側のトンネル入口に立った日が、すごく懐かしく思い出されてくる。

 そんな感慨にひたっていると、1台のバイクが停まった。スズキDR−Z400SMに乗る中村貴典さん。中村さんはUターンして戻ってきてくれたのだが、開口一番、「やっぱりカソリさんだ。やっとみつけることができましたよ」といって喜んでくれた。「こうしてバイクを走らせていると、やっぱりいいことがありますねえ」という中村さんの言葉にうれしくなってしまう。

 雁坂峠で昼食。トンネル入口近くの「マウントパーク」で甲州の名物料理の「ほうとう鍋」を食べた。具だくさんのほうとう鍋は体の芯からあたたまる。味噌味の汁がうまい。

 ほうとうパワーで、雁坂峠の「峠返し」の温泉めぐりを開始する。

 第3湯目は天科温泉「こやす旅館」の湯。ここは脱衣所は男女別だが、中で一緒になる混浴の湯。だが残念ながら「もうすこしで女性の方が出ますので」と宿の主人にいわれ、しばらく待ち、女性客が出たところで入った。熱めの湯と温めの湯の2つの湯船。笛吹川の渓流の音を聞きながら湯につかった。

 第4湯目は川浦温泉「山県館」の湯。ここの入浴料は1500円。入浴料の上限とした1000円を超えるが、どうしても入りたい湯だったので、よしとして入った。大浴場の湯に入ったあと、エレベーターで川底に下り、笛吹川の河原の露天風呂にも入った。以前、ここでは若い女性と一緒になったことがある。そんな混浴の思い出というのはいつまでもおぼえているものだ。

 第5湯目は三富温泉「白龍館」の湯。国道140号に面した玄関がこの宿の4階で、大浴場のある1階まではエレベーターで降りていく。大浴場はもうもうと湯気がたちこめ、ほとんど何もみえない。ここは源泉が52度の高温湯で、湯量も豊富。樋から流れ落ちる湯は、おしげもなく湯船からあふれ出ている。

 天科温泉、川浦温泉、三富温泉の笛吹温泉郷の3湯は「信玄の隠し湯」として知られている。甲州から信州にかけて点在する「信玄の隠し湯」といわれる温泉はどこも名湯だ。

 第6湯目は笛吹の湯温泉「笛吹の湯」。内風呂には熱めの湯と温めの湯の2つの湯船。露天風呂は温めの湯だ。

 雁坂峠の峠返しで牧丘に戻ったのは17時。すでにあたりは暗い。ここからは牧丘を拠点にしての温泉めぐり。

 第7湯目は鼓川温泉の日帰り湯「鼓川温泉」の湯。大浴場と露天風呂。ここは人気の湯で混みあっていた。湯から上がると館内の食堂「あぜ道」で夕食。「塩さば定食」を食べた。

 夕食を食べて元気が出たところで、第8湯目の牧丘温泉の日帰り湯「花かげの湯」に入り、牧丘から国道140号で山梨市へ。そこからフルーツ公園に登って行く。眼下にはまばゆいばかりの甲府盆地の夜景が広がっている。

 第9湯目はその奥にあるほったらかし温泉。以前はその名前通りの温泉だったとのことだが、今では超人気。異様なくらいに若い女性が多い。「こっちの湯」、「あっちの湯」とあるが、入浴料はともに600円。ということでより広い湯船の「あっちの湯」に入った。露天風呂の温めの湯につかりながら甲府盆地の夜景を見下ろした。正面の山並みが落ち込んだあたりが御坂山地の御坂峠。目をこらしてその向こうを見たが、富士山は見えなかった。天空にはこうこうと輝く月。ここで東京に帰る若林さんと別れた。

 ほったらかし温泉で今晩の宿探し。近くの春日井温泉に泊まろうと、「笛声旅館」や「日の出温泉」、「ホテル春日井」…と、かたっぱしから電話をしたが宿が取れない。岩下温泉もダメだ。「これが最後だ」とばかりに、国道140号沿いにある一ノ橋温泉の一軒宿「一ノ橋館」に電話すると、ありがたいことに宿泊OK。助かった!

 牧丘に戻ると国道140号で雁坂峠の方向に走り、一ノ橋温泉の「一ノ橋館」へ。到着は20時45分。さっそく第10湯目の「宿湯」に入った。浴室の窓を開けると、眼下には月光に照らされた笛吹川。湯から上がると、部屋の冷蔵庫のビールで一人で乾杯!

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 塩山温泉「廣友館」
朝食 塩山温泉「廣友館」 よせゆば、ゆでゆば、納豆、ゆで卵、のり、焼きナス、醤油漬けのタマネギ、そば、漬物、自家製ヨーグルト、ご飯、味噌汁
8時30分 塩山温泉を出発
柳沢峠(峠返し) 「柳沢峠茶屋」 コーヒー(390円)
210湯目 大菩薩の湯温泉「大菩薩の湯」(600円)
211湯目 裂石温泉「雲峰荘」(500円)
雁坂峠(峠返し)
昼食 雁坂峠近くの「マウントパーク」 「ほうとう鍋」(1350円)
212湯目 天科温泉「こやす旅館」(500円)
213湯目 川浦温泉「山県館」(1500円)
214湯目 三富温泉「白龍閣」(500円)
215湯目 笛吹の湯温泉「笛吹の湯」(500円)
216湯目 鼓川温泉「鼓川温泉」(500円)
夕食 「鼓川温泉」 「塩さば定食」(840円)
217湯目 牧丘温泉「花かげの湯」(500円)
218湯目 ほったらかし温泉「ほったらかしの湯」(600円)
若林さんとの別れ
20時45分 一之橋温泉「一之橋館」(1泊朝食7000円)
219湯目 一之橋温泉「一之橋館」
本日の走行距離数 143キロ
本日の温泉入浴数 10湯

塩山温泉「廣友館」の朝湯に入る塩山温泉「廣友館」の朝食塩山温泉「廣友館」の朝食を食べる

塩山温泉「廣友館」の朝湯に入る 塩山温泉「廣友館」の朝食 塩山温泉「廣友館」の朝食を食べる

塩山温泉「廣友館」を出発柳沢峠の展望台から富士山を見る柳沢峠近くからの眺め

塩山温泉「廣友館」を出発 柳沢峠の展望台から富士山を見る 柳沢峠近くからの眺め

大菩薩の湯温泉「大菩薩の湯」大菩薩の湯温泉「大菩薩の湯」の露天風呂に入る裂石温泉「雲峰荘」

大菩薩の湯温泉「大菩薩の湯」 大菩薩の湯温泉「大菩薩の湯」の露天風呂に入る 裂石温泉「雲峰荘」

裂石温泉「雲峰荘」の露天風呂に入る雁坂峠の雁坂トンネル「マウントパーク」の「ほうとう鍋」

裂石温泉「雲峰荘」の露天風呂に入る 雁坂峠の雁坂トンネル 「マウントパーク」の「ほうとう鍋」

ほうとうを食べる天科温泉「こやす旅館」天科温泉「こやす旅館」のフロント

ほうとうを食べる 天科温泉「こやす旅館」 天科温泉「こやす旅館」のフロント

天科温泉「こやす旅館」の湯に入る天科温泉「こやす旅館」前の子安地蔵川浦温泉「山県館」

天科温泉「こやす旅館」の湯に入る 天科温泉「こやす旅館」前の子安地蔵 川浦温泉「山県館」

川浦温泉「山県館」の大浴場川浦温泉「山県館」の露天風呂に入る三富温泉「白龍閣」

川浦温泉「山県館」の大浴場 川浦温泉「山県館」の露天風呂に入る 三富温泉「白龍閣」

笛吹の湯温泉「笛吹の湯」鼓川温泉「鼓川温泉」鼓川温泉「鼓川温泉」の「塩さば定食」

笛吹の湯温泉「笛吹の湯」 鼓川温泉「鼓川温泉」 鼓川温泉「鼓川温泉」の「塩さば定食」

牧丘温泉「花かげの湯」ほったらかし温泉から見る甲府盆地の夜景一之橋温泉「一之橋館」の湯

牧丘温泉「花かげの湯」 ほったらかし温泉から見る甲府盆地の夜景 一之橋温泉「一之橋館」の湯

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