温泉めぐり日本一周[43日目]
投稿日:2017年8月23日
西部温泉のおばちゃんと再会
上田温泉「ホテル祥園」の朝湯に入り、湯豆腐、干物、オムレツ、煮物、漬物、ご飯、味噌汁の朝食を食べ、8時15分に出発。
上田から別所温泉へ。上田電鉄の終点、別所温泉駅前で相棒のスズキST250を止めた。そのときのことだ。車が止まり、降りてきた人に「もうそろそろ来るころだと思ってましたよ」と声をかけられた。それが「溶接屋さん」との出会い。「溶接屋さん」もライダーで、ホンダのXLRバハを長年、乗っている。「溶接屋さん」は毎日、「300日3000湯」のサイトを見てくれているとのことで、ぼくのST250に乗った姿をみかけると、すぐに追いかけてきてくれた。「これ、どうぞ」といって「リポビタンD」と「魚肉ソーセージ」を差し入れてくれた。
「溶接屋さん」にとって別所温泉はまさに地元の温泉。「ここには全部で4湯の共同浴場がありますよ」とのことで、1湯づつ説明してくれた。そのうち「イチオシ」の「石湯」に行くことにした。
「溶接屋さん」と別れ、別所温泉の温泉街に入っていく。
第1湯目の別所温泉「石湯」は温泉街の一番奥にある。入口には「真田幸村公 隠し湯」の碑。それが飲泉塔になっていて、まずは源泉を飲み干した。「石湯」はその名の通りの湯で石をふんだんに配した浴室。源泉50度の高温湯が石の湯船からあふれ出ている。湯船に身をひたすと、ザーッとど派手な音をたてて湯が流れ出る。湯から上がると、「溶接屋さん」の差し入れの「リポビタンD」を飲んだ。
別所温泉からは平井寺峠を貫く有料の平井寺トンネルを抜け、国道254号に出る。国道とのT字路を右折し、三才山峠へ。三才山峠の「峠返し」で3湯をめぐるのだ。
第2湯目は霊泉寺温泉。ここでは「霊泉寺温泉共同浴場」に入ろうとしたが、まさにそのとき、「カソリさ〜ん!」と声をかけられた。なんと白馬のペンション「ミーティア」で一緒だった「よかさん」ではないか。「よかさん」の家は国道254号沿いにあって、バイクの音でパッと外を見たら、ぼくが通り過ぎていったのだという。「きっと霊泉寺温泉に行くに違いない」と、すぐさま車で追いかけてきてくれた。「よかさん」は三才山峠の「峠返し」につきあってくれるという。こうして霊泉寺温泉の湯量豊富な共同浴場の湯につかった。
次は大塩温泉。だが、共同浴場「大塩温泉館」のオープンは14時…。そこで近くのラーメンショップ「牛若丸」で昼食にした。「よかさん」はその店にご主人を呼び、3人でラーメンを食べた。「ネギ味噌チャーシュー」の中盛りをライスつきで頼んだのだが、すごいボリューム。大盛りにしないでよかった。
昼食後、ご主人と別れ、「よかさん」と三才山峠へ。大塩温泉、鹿教湯温泉と通り過ぎ、峠のトンネルに近づくと、周囲の山々は雪景色に変わった。有料の「三才山トンネル」の手前で折り返し、来た道を戻った。
第3湯目は鹿教湯温泉の共同浴場「文殊の湯」。無色透明の湯。鹿教湯温泉といったら信州でもよく知られた温泉だが、共同浴場の入浴客は自分一人。信州の名湯を独り占めにした。つづいて第4湯目、さきほどの大塩温泉の共同浴場「大塩温泉館」の湯に入った。14時ぴったりの到着でオープンと同時に入ったのだ。
「よかさん」と別れ、今度は中山道(国道142号)で和田峠に向かっていく。峠下の和田宿ではなつかしの西部温泉に立ち寄る。すでに廃業して久しいが、建物はそのまま残っていた。西部温泉の湯に入ったのは1995年7月31日のこと。その日は汗が噴き出るほどの、とびきり暑い日だった。フロントのおばちゃんに入浴料の400円を手渡すと、「こんな暑い日によくきてくれた!」といって喜んでくれた。そのときフロントでちょっとした立ち話をしたが、おばちゃんは「(あなたは)努力家だねえ」といった。ぼくの汗だくになった顔が「努力家」に見えたのだろう。
そんな西部温泉のおばちゃんとのなつかしの再会。建物の中を見せてもらったが、浴槽はそのまま残っていた。かつてのフロントには、丸子実業野球部の面々が西部温泉の湯に入っている写真が掲げられていた。1985年7月20日のもの。長野県大会での優勝記念だという。その写真は西部温泉の歴史を感じさせ、胸に熱いものがこみあげてきた。ところでおばちゃんの話によると、西部温泉は西部劇の「西部」にちなんだ温泉名。ここの温泉を掘り当てたご主人が大の西部劇ファンだったからだという。
和田峠の「峠返し」で和田宿に戻ると、第5湯目、和田宿温泉の日帰り湯「ふれあいの湯」に入った。さきほどの西部温泉のすぐ近くにある。大浴場からは中山道の和田宿を取り囲む山々を一望。湯につかりながら、夕日が和田峠の方向に落ちていくのを眺めた。
和田峠の次は国道152号の大門峠。大門峠からはビーナスラインで池の平温泉へ。そこまでのわずかな道のりがすさまじいほどに怖かった。すでに日は落ち、気温が急速に下がっているので、路面はあっというまに凍りつく。パリパリパリッと、まるで音をたてて凍りつくかのような凍結の速さで、あっというまにツルンツルンのアイスバーンになる。その上をソロリソロリと走った。
第6湯目の池の平温泉は一大温泉リゾート。大浴場と大露天風呂、洞窟風呂の湯に入った。ここから大門峠までの下りはさらに怖い。路面はいよいよ凍りつき、まるでスケートリンクの氷上をバイクで走っているよいうなものだ。転倒もしないで大門峠に戻ったときは思わず胸をなでおろした。大門峠の「峠返し」で上田へと下っていく。
第7湯目は長門温泉「やすらぎの湯」。大浴場と大露天風呂。何しろ気温が低いので、露天風呂までのわずかな距離の移動が辛い。ここには羽釜風呂もある。湯から上がると夕食。「カツカレー」を食べた。
第7湯目は武石温泉「うつくしの湯」。大浴場と大露天風呂に入り、湯から上がったが、体が思うようには動かない。こういうときは寝るに限る。時間制限なしで「30分寝」をした。目を覚ました時は体はスッキリしている。
さー、最後の寒さとの闘い。猛烈な寒さの中、ST250を走らせ、国道152号で上田へ。何とも厳しい氷点下の夜道の走行。上田の市街地に入り、国道18号のバイパス沿いにある秋和温泉に着いたのは21時10分。ほんとうにありがたかったのだが、一軒宿の「秋和鉱泉旅館」に電話したのは夜になってからのこと。ほぼ満員の泊まり客のようだったが、それを無理して部屋を用意してくれたのだ。「お名前は?」と聞かれ、「カソリといいます」といったとき、電話の若女将は「えー、あのカソリさんですか。カソリさんがウチのことを雑誌に書いてくれてからというもの、バイクのお客さんがよく来てくれるんですよ!」と、何とも明るい声で、うれしそうな声でいう。若女将の弾んだ声に、ぼくまですっかりうれしくなってしまった。そんな若女将の出迎えを受け、第9湯目の「宿湯」につかったときは心底、幸福感を味わった。冷凍庫の中を走りつづけてきたようなもので、体はギンギンに冷え切っていた。凍りついた体全体に血がめぐり、解凍されて蘇る。
「う〜ん、たまらん!!!」
と、思わず声が出た。
朝湯 | 上田温泉「ホテル祥園」 |
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朝食 | 上田温泉「ホテル祥園」 湯豆腐、干物、オムレツ、煮物、漬物、ご飯、味噌汁 |
8時15分 | 上田温泉「ホテル祥園」を出発 |
「溶接屋さん」との出会い | |
367湯目 | 別所温泉「石湯」(150円) |
独鈷温泉(定休日) | |
368湯目 | 霊泉寺温泉「霊泉寺温泉共同浴場」(100円) |
「よかさん」との出会い | |
昼食 | 霊泉寺温泉近くのラーメン店 「ネギ味噌チャーシュー&ライス」 |
三才山峠(峠返し) | |
369湯目 | 鹿教湯温泉「文殊の湯」(300円) |
370湯目 | 大塩温泉「大塩温泉館」(100円) |
「よかさん」との別れ | |
西部温泉(廃業湯) | |
和田峠(峠返し) | |
371湯目 | 和田宿温泉「ふれあいの湯」(300円) |
仏岩温泉(廃業湯) | |
大門峠(峠返し) | |
372湯目 | 池の平温泉「池の平温泉」(1000円) |
373湯目 | 長門温泉「やすらぎの湯」(500円) |
夕食 | 長門温泉「やすらぎの湯」 「カツカレー」(800円) |
374湯目 | 武石温泉「うつくしの湯」(400円) |
21時10分 | 秋和温泉「秋和鉱泉旅館」(1泊朝食5000円) |
375湯目 | 秋和温泉「秋和鉱泉旅館」 |
本日の走行距離数 182キロ | |
本日の温泉入浴数 9湯 |
上田温泉「ホテル祥園」の朝食 | 「ホテル祥園」を出発 | 上田から別所温泉へ |
前方に立ちふさがる山並み | 上田電鉄の終点、別所温泉駅 | 別所温泉での「溶接屋さん」との出会い |
別所温泉「石湯」 | 別所温泉「石湯」の湯船 | 独鈷温泉は定休日 |
独鈷温泉の背後に聳える独鈷山 | 霊泉寺温泉「霊泉寺温泉共同浴場」 | 霊泉寺温泉近くのラーメン店の「ネギ味噌チャーシュー&ライス」 |
三才山トンネルの入口で折り返し | 鹿教湯温泉「文殊の湯」 | 大塩温泉「大塩温泉館」 |
大塩温泉「大塩温泉館」の湯 | 西部温泉の湯船に入る | 西部温泉にやってきた丸子実業野球部の写真 |
新和田トンネルの入口で折り返し | 和田宿温泉「ふれあいの湯」 | 「ふれあいの湯」から見る和田宿の風景 |
長門温泉「やすらぎの湯」 | 夕暮れのビーナスラインを走る | 池の平温泉の内部 |
長門温泉「やすらぎの湯」に戻ってきた | 「やすらぎの湯」の「カツカレー」 | 秋和温泉「秋和鉱泉旅館」の湯で生き返る |