ジクサー150分割日本一周[235]
投稿日:2021年8月13日
天塩川河畔の「北海道命名の地」
日本海の遠別から道道119号で咲花峠を越え、国道40号に出た。
天塩川沿いの国道40号で音威子府方向に10キロほど走ったところが「北海道命名の地」への入口。天塩川の河畔に下ったところには、「北海道命名の地」碑が立っている。「北海道」の名付け親は探検家の松浦武四郎。その松浦武四郎の「天塩日誌」の案内板も立っている。それには次のように書かれている。
6月11日(調査5日目)
夜明けを待って出発。空には黒い雨雲があって、地上には濃い朝もやがたちこめている。川岸にはウニシテやラウラウが多く見られるが、これらはアイヌの人たちが食料とする野草である。
先に進むと両岸は岩の崖になり、舟に網をつけ、引いて上がる。やがてカムイルウサン(中川町神居山)という高さが約900メートルもある絶壁がそそり立ち、その頂にはエゾマツなどが岩を這うように生えていて奇景である。この地はたいへん神聖な場所なので、通る際にはいつもイナウとタバコと米を一つまみづつ、この地の神に供えてから通るのだという。
ここを過ぎると、重なり合った岩の上から一筋の滝が落ち、7段にわたって流れている。周囲は険しい崖ばかりで、様々な動物を思わせるような奇岩怪石が川の中に見られる。浅いつもりで川の中を歩くと急に深くなるので、大変危険で、ここで溺れる者も多い。そのことから昔から川を歩いて渡ることは、厳しく禁じられているそうである。
トンベツホには家が2軒ある。ここに案内人トセツの妻子が来ていたので、今夜はトンベツホに泊ることにした。
この日、暮れてから近くでしきりに「ホッ、ホッ、ホッホッ」と鳴く鳥の声を聞いた。アイヌの人たちはアオチカダンチカフと呼んでいるらしいが、黄泉鳥の意味だそうである。「仏法、仏法」とか「梅干し、梅干し」と鳴いているようにも聞こえるが、この家の主人のアエトモの話では、昔、最上徳内もこの鳴き声を聞いて、この鳥は本土の尊い高山にいる仏法僧だと語ったそうだ。それで私もこれがかの有名な仏法僧であることを知ったのである。
松浦武四郎はアイヌの長老のアエトモからアイヌの通称である「カイナ」とは、「この国に生まれた者」という意味だということを教えられた。「ナ」は貴人をさす尊敬語だという。これを聞いた武四郎は、アイヌの人たちは自らの国を「かい」と呼ぶことを知り、「加伊」の字を当てた。
その後、明治2年(1869年)に、松浦武四郎は道名に関する意見書を提出した。「北加伊道」、「日高見道」、「海北道」、「海島道」、「東北道」「千島道」の6道の案を提示したが、このうち北加伊道(ほっかいどう)が採用され、加伊を海に替えて「北海道」が誕生した。これをもって日本は東海道、東山道、北陸道、南海道、山陰道、山陽道、西海道の7道に北海道が加わって、8道になった。